POSレジ選びで失敗しないために
POSレジは店舗運営の中核を担うシステムです。適切なPOSレジを選ぶことで業務効率化、売上向上、顧客満足度アップなど多くのメリットがありますが、逆に自社のニーズに合わないシステムを導入してしまうと、業務の非効率化や追加コストの発生などの問題が生じることも。このガイドでは、POSレジ選びで失敗しないためのポイントを、業種別の特性も踏まえて詳しく解説します。
このガイドでわかること
- 業種別に最適なPOSレジの選び方
- 必要な機能の見極め方
- コスト比較の正しい方法
- 導入前のチェックリスト
よくある失敗パターン
- 初期費用だけで判断してしまう
- 必要な機能を見極められていない
- 将来の拡張性を考慮していない
- サポート体制を確認していない
専門家からのアドバイス
「POSレジ選びで最も重要なのは、自店の業務フローに合ったシステムを選ぶことです。機能が多ければ良いというわけではなく、必要な機能がシンプルに使えるかどうかが重要です。また、初期費用だけでなく、月額費用や決済手数料なども含めた総コストで比較することをお勧めします。」
- 小売業コンサルタント 佐藤 健太郎氏
POSレジ選びの5ステップ
業種と規模を明確にする
POSレジは業種によって必要な機能が大きく異なります。まずは自店の業種と規模を明確にしましょう。
業種別の主な特徴
- 小売店:在庫管理、バーコード対応が重要
- 飲食店:オーダーエントリー、テーブル管理が重要
- アパレル:サイズ・カラー管理、EC連携が重要
- 美容サロン:予約管理、顧客管理が重要
規模による考慮点
- 小規模店舗:初期費用の抑制、操作のシンプルさ
- 中規模店舗:業務効率化、データ分析機能
- 大規模・複数店舗:多店舗連携、詳細な分析機能
ワークシート
以下の質問に答えて、自店の特性を明確にしましょう:
- ・ 業種は?(小売、飲食、アパレル、美容など)
- ・ 店舗数は?(単店舗 or 複数店舗)
- ・ 従業員数は?
- ・ 1日の平均取引数は?
- ・ 商品点数は?
必要な機能を洗い出す
POSレジに求める機能を「必須」「あれば便利」「不要」に分類しましょう。必要のない機能に費用をかけないことが重要です。
必須機能
ビジネスに絶対に必要な機能
- 基本的な会計処理
- 必要な決済方法対応
- 業種特有の必須機能
- レポート・売上管理
あれば便利な機能
業務改善に役立つ機能
- 顧客管理機能
- 在庫分析機能
- 他システム連携
- モバイル対応
不要な機能
コスト削減のため見極める
- 使わない業種特化機能
- 過剰な分析ツール
- 不要なハードウェア
- 使わない連携機能
機能リスト作成のポイント
機能を洗い出す際のポイント:
- 現在の業務フローを書き出し、どの部分を効率化したいか考える
- スタッフにもヒアリングし、現場の声を反映させる
- 将来的な事業拡大も視野に入れる
- 同業他社の事例も参考にする
コストを正しく比較する
POSレジのコストは初期費用だけでなく、月額費用や決済手数料なども含めた総コストで比較することが重要です。
コスト比較の際に考慮すべき項目
コスト項目 | 内容 | チェックポイント |
---|---|---|
初期費用 |
・ソフトウェアライセンス ・ハードウェア購入費 ・導入設定費用 |
・無料プランはあるか ・必要最低限のハードウェアは何か ・自分で設定できるか |
月額費用 |
・基本料金 ・オプション機能料金 ・保守サポート料 |
・必要な機能のみのプランはあるか ・スタッフ数による料金体系か ・サポート内容は十分か |
決済手数料 |
・クレジットカード決済 ・電子マネー決済 ・QRコード決済 |
・主要決済方法の手数料率 ・最低手数料の有無 ・入金サイクル |
その他コスト |
・消耗品費(レシート用紙等) ・通信費 ・アップグレード費用 |
・消耗品の互換性 ・オフライン対応の有無 ・バージョンアップ費用 |
総コスト計算式
3年間の総コストを計算する方法:
3年間の総コスト = 初期費用 + (月額費用 × 36ヶ月) + (年間売上 × 決済手数料率 × 3年) + その他コスト
例:初期費用10万円、月額5,000円、年商1,000万円、決済手数料3.24%の場合
3年間の総コスト = 100,000円 + (5,000円 × 36ヶ月) + (10,000,000円 × 0.0324 × 3年) = 1,252,000円
サポート体制を確認する
POSレジは店舗運営の要となるシステムです。トラブル時のサポート体制や、導入時のサポート内容をしっかり確認しましょう。
確認すべきサポート内容
- サポート時間:営業時間内に対応可能か
- サポート方法:電話、メール、チャット等
- 対応速度:緊急時の対応時間
- 導入サポート:初期設定のサポート内容
- トレーニング:スタッフ向け研修の有無
- マニュアル:操作マニュアルの充実度
サポートに関する質問例
- 「システムがダウンした場合、どのくらいで復旧できますか?」
- 「導入時のデータ移行はサポートしてもらえますか?」
- 「オフライン時の対応方法を教えてください」
- 「スタッフ向けのトレーニングはどのように行われますか?」
- 「サポート料金は月額費用に含まれていますか?」
サポート評価の方法
サポート体制を評価するためのポイント:
- 問い合わせ前の対応の速さをチェック
- 実際に質問してみて回答の質を確認
- ユーザーレビューでサポート評価を調査
- 同業他社のサポート体験を聞いてみる
試用・デモを活用する
実際に使ってみないとわからない操作性や使い勝手があります。無料トライアルやデモを活用して、実際の業務に合うか確認しましょう。
試用時のチェックポイント
- 操作性:直感的に操作できるか
- 処理速度:会計処理がスムーズか
- カスタマイズ:自店に合わせた設定が可能か
- レポート:必要な情報が得られるか
- 安定性:エラーなく動作するか
スタッフの意見を聞く
実際に使用するスタッフの意見は非常に重要です:
- レジ担当者に操作性を評価してもらう
- 管理者に管理機能を評価してもらう
- 複数のスタッフから意見を集める
- ベテランと新人両方の意見を聞く
試用・デモ活用のコツ
より効果的に試用期間を活用するためのポイント:
- 実際の業務シナリオを想定して試してみる
- 繁忙時間帯を想定した処理速度をチェック
- 複数のPOSレジを同時に試用して比較する
- 試用中に問い合わせをしてサポート品質を確認
業種別POSレジ選びのポイント
小売店向けPOSレジ
小売店では在庫管理、バーコード対応、多様な決済方法への対応が重要です。特に商品点数が多い場合は、効率的な在庫管理機能が必須となります。
重要な機能:
飲食店向けPOSレジ
飲食店ではオーダーエントリー、テーブル管理、キッチンプリンター連携などが重要です。特に繁忙時間帯のスムーズな処理が求められます。
重要な機能:
アパレル向けPOSレジ
アパレルショップではサイズ・カラー管理、タグ発行、EC連携などが重要です。特に在庫の正確な管理が売上に直結します。
重要な機能:
美容サロン向けPOSレジ
美容サロンでは予約管理、顧客管理、スタッフ別売上管理などが重要です。特に予約と顧客データの連携がリピート率向上に繋がります。
重要な機能:
業種別選定のまとめ
どの業種でも共通して重要なのは、自店の業務フローに合ったPOSレジを選ぶことです。機能が多ければ良いというわけではなく、必要な機能がシンプルに使えるかどうかがポイントです。
業種共通の重要機能
- スムーズな会計処理
- 多様な決済方法対応
- 基本的な売上レポート
- 安定したシステム稼働
選定時の共通ポイント
- 実際の業務フローに合うか
- スタッフが使いこなせるか
- 将来の拡張性はあるか
- サポート体制は充実しているか
POSレジ導入前チェックリスト
POSレジ導入前に確認すべき項目をチェックリスト形式でまとめました。このリストを活用して、導入準備を進めましょう。
機能チェックリスト
コストチェックリスト
サポートチェックリスト
導入準備チェックリスト
よくある失敗例と対策
POSレジ導入時によくある失敗パターンとその対策をご紹介します。先人の失敗から学び、スムーズな導入を実現しましょう。
初期費用だけで判断してしまう
初期費用が安いPOSレジを選んだものの、月額費用や決済手数料が高く、長期的に見ると高コストになってしまうケース。
失敗事例
「初期費用0円に惹かれて導入したPOSレジでしたが、月額料金が予想以上に高く、決済手数料も競合他社より1%以上高かったため、年間で50万円以上余計にコストがかかってしまいました。」
- 東京都内 雑貨店オーナー
対策
- 3年間の総コストで比較する
- 決済手数料の違いを売上予測と合わせて計算
- 隠れたコスト(サポート料、アップデート料)も確認
必要な機能を見極められていない
自店に必要な機能が不足していたり、逆に使わない機能に余計なコストを払っていたりするケース。
失敗事例
「アパレルショップなのにサイズ・カラー別の在庫管理ができないPOSレジを導入してしまい、結局3ヶ月で別のシステムに乗り換えることになりました。初期設定やデータ移行の手間が二度かかり、大変でした。」
- 大阪府 アパレルショップ経営者
対策
- 業務フローを書き出し、必要機能を洗い出す
- 同業他社の導入事例を参考にする
- 無料トライアルで実際に使ってみる
将来の拡張性を考慮していない
事業拡大やニーズの変化に対応できず、短期間でシステム変更を余儀なくされるケース。
失敗事例
「小規模向けのシンプルなPOSレジを導入しましたが、1年後に2号店をオープンした際、多店舗管理機能がなく別々に管理することになりました。在庫の店舗間移動や売上の一元管理ができず、非常に不便です。」
- 福岡県 カフェオーナー
対策
- 3〜5年先の事業計画も考慮する
- アップグレードプランの有無を確認
- API連携など拡張性の高いシステムを選ぶ
サポート体制を確認していない
トラブル発生時にサポートが不十分で、長時間営業ができなくなるケース。
失敗事例
「土曜の夜にPOSレジがフリーズし、再起動しても復旧しませんでした。サポートは平日のみで、月曜まで対応してもらえず、週末は手書き伝票での対応を余儀なくされました。売上にも大きく影響しました。」
- 名古屋市 居酒屋経営者
対策
- サポート時間と対応方法を事前確認
- 緊急時のバックアッププランを用意
- ユーザーレビューでサポート評価を調査
失敗を防ぐためのポイント
POSレジ導入の失敗を防ぐための重要なポイントをまとめました。
-
1十分な情報収集:複数のPOSレジを比較検討し、ユーザーレビューや導入事例を調査する
-
2無料トライアルの活用:実際に使ってみることで操作性や機能の過不足を確認する
-
3スタッフの意見を聞く:実際に使用するスタッフの意見を取り入れ、現場視点での評価を行う
-
4専門家への相談:POSレジ導入に詳しいコンサルタントやアドバイザーに相談する
-
5段階的な導入:可能であれば一部の機能から試験的に導入し、徐々に拡大していく
POSレジ選びQ&A
POSレジとレジスターの違いは何ですか?
従来のレジスターは単に金銭の出し入れと売上記録を行う機器ですが、POSレジはPoint of Sale(販売時点情報管理)システムの略で、販売データをリアルタイムで管理・分析できるシステムです。
POSレジでは、商品管理、在庫管理、顧客管理、売上分析などの機能が統合されており、経営判断に役立つデータを収集・活用できます。クラウド型POSレジなら、インターネットを通じてどこからでも店舗データにアクセス可能です。
POSレジの導入にはどのくらいの費用がかかりますか?
POSレジの費用は大きく分けて、初期費用、月額費用、決済手数料の3つがあります。
- ・ 初期費用:0円〜30万円程度(ソフトウェアライセンス、ハードウェア購入費、導入設定費用など)
- ・ 月額費用:0円〜2万円程度(基本料金、オプション機能料金、保守サポート料など)
- ・ 決済手数料:クレジットカード決済で3.24%〜3.74%程度
最近はクラウド型POSレジの普及により、初期費用0円、月額数千円から導入できるサービスも増えています。ただし、必要なハードウェア(タブレット、レシートプリンター、キャッシュドロワーなど)は別途購入が必要な場合があります。
インターネットが切れた場合でもPOSレジは使えますか?
多くのクラウド型POSレジはオフラインモードを備えており、一時的なインターネット接続の問題があっても基本的な会計処理は可能です。ただし、POSレジによってオフライン時の機能制限は異なります。
オフライン時でも使用できる機能の例:
- ・ 基本的な会計処理
- ・ レシート発行
- ・ 現金決済の処理
ただし、クレジットカード決済やリアルタイムの在庫更新、クラウド上のデータ同期などはインターネット接続が回復するまで待つ必要があります。安定したインターネット環境の確保は重要ですが、オフライン対応の充実度も選定ポイントの一つです。
POSレジの導入にどのくらいの時間がかかりますか?
POSレジの導入期間は、システムの複雑さ、店舗の規模、商品数などによって異なりますが、一般的には以下のような目安があります:
- ・ 小規模店舗(商品数100点以下):1日〜1週間程度
- ・ 中規模店舗(商品数100〜1,000点):1週間〜2週間程度
- ・ 大規模店舗(商品数1,000点以上):2週間〜1ヶ月程度
導入の主な工程としては、アカウント開設、ハードウェアのセットアップ、商品マスタの登録、スタッフトレーニング、テスト運用などがあります。特に商品マスタの登録に時間がかかることが多いですが、CSVでの一括登録機能を活用すると効率的です。
POSレジと会計ソフトの連携は可能ですか?
多くのPOSレジは主要な会計ソフトとの連携機能を備えています。連携することで、売上データを自動的に会計ソフトに取り込み、経理業務を効率化できます。
主な連携可能な会計ソフトの例:
- ・ freee
- ・ MFクラウド会計
- ・ やよいの青色申告
- ・ 弥生会計
- ・ PCA会計
連携方法はPOSレジによって異なりますが、API連携やCSVエクスポート/インポートなどの方法があります。POSレジを選ぶ際は、使用している(または使用予定の)会計ソフトとの連携が可能かどうか確認することをおすすめします。
まとめ
POSレジ選びは店舗運営の効率化と売上向上に直結する重要な決断です。このガイドで紹介した5つのステップに沿って、自店に最適なPOSレジを選びましょう。
POSレジ選びの5ステップ
-
1
業種と規模を明確にする
自店の業種特性と規模に合ったPOSレジを選ぶ
-
2
必要な機能を洗い出す
必須機能と不要な機能を明確にし、最適な機能セットを見極める
-
3
コストを正しく比較する
初期費用だけでなく、月額費用や決済手数料も含めた総コストで比較
-
4
サポート体制を確認する
トラブル時のサポート内容や導入時のサポート体制を確認
-
5
試用・デモを活用する
実際に使ってみて、操作性や使い勝手を確認
POSレジ選びで大切なこと
POSレジ選びで最も重要なのは、「自店の業務フローに合ったシステムを選ぶこと」です。機能が多ければ良いというわけではなく、必要な機能がシンプルに使えるかどうかがポイントです。
また、将来の事業拡大も視野に入れ、拡張性のあるシステムを選ぶことも重要です。十分な情報収集と比較検討を行い、スタッフの意見も取り入れながら、長期的な視点でPOSレジを選びましょう。
このガイドが皆様のPOSレジ選びのお役に立てば幸いです。
さらに詳しい情報や各POSレジの比較については、下記のリンクからご確認ください。